個別銘柄の割安度を確認するとき、PER(株価収益率)を比較するはよく知られた方法かと思います。
8月15日時点の日経平均のPERは18倍程度ですので、これより低ければ割安といえるかもしれません。

しかし、通常スクリーニングできるPERでは各企業の保有している資産の状況ははっきりわかりません。
株価を一株当たり純利益で割っただけですからね。
今回は、貸借対照表を読んでネットキャッシュを計算し、より割安度の実態に近いキャッシュニュートラルPERについて見ていきます。
ネットキャッシュ、キャッシュニュートラルPERとは
ネットキャッシュ、キャッシュニュートラルPERはどちらも清原達郎氏の「わが投資術」に掲載されています。
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ネットキャッシュのネットは正味という意味で、すぐに現金化できるであろう資産から負債を差し引いて残った資産のことを指します。
ネットキャッシュ比率は、ネットキャッシュを時価総額で割った数値を指します。
ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債(流動負債及び固定負債)
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額引用:清原達郎著 わが投資術
ネットキャッシュ比率が1ということは、その企業が持っている即現金化可能な資産が時価総額と同額ということを示します。
企業買収的な面から見れば、時価総額分だけお金を借りてくれば実質タダで買収できるということなので異常な状態ですね。
ネットキャッシュPERは、時価総額からネットキャッシュを控除したあとのPERを示します。
ネットキャッシュPER=PER×(1-ネットキャッシュ比率)
もしネットキャッシュ比率が1より大きい場合、ネットキャッシュPERはマイナスになってしまうため、買収すればお釣りがくるような、もうよくワカラナイ状態になっていると考えられます。小型株ではわりと見かけますね。
つまり、現金化可能資産をたっぷり持っているのに平均的なPERであれば、実際は割安の可能性があるということです。
実際の貸借対照表を読んで計算してみましょう。
貸借対照表を読む
7921 TAKARA&COMPANYという銘柄を例に決算短信の貸借対照表を見ていきます。2025年5月決算短信から切り抜いてきていますが、ぜひご自身の手でも確認してみてください。
一次情報を自らの手で確認しにいくことは非常に重要です。



ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債(流動負債及び固定負債)
=261億+32億×70%-93億
=190億円

ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額
=190億÷504億
=38%
さて、ネットキャッシュが時価総額の38%となりましたので、ネットキャッシュPERは次のとおりとなります。
ネットキャッシュPER=PER×(1-0.38)
=16.04×0.62
=9.94倍
10倍を切ってきました。こうして内部の現金化可能資産を見ると、フェアバリューに近い銘柄でも意外と割安な銘柄が見つかるのではないでしょうか。
慣れてくれば、PERに対してざっくり30%、40%安くなるなど暗算で把握できるようになってきます。
まとめ
- PERは企業の資産状況を反映しているとはいいがたい
- 現金やすぐに換金可能な資産をどれくらいもっているかで割安度を測れる
- 何銘柄も見ていればだんだん決算短信に慣れてくる
ネットキャッシュPERが低いからといって必ずしも株価が上がるとは限りません。そこはどれだけ銘柄分析を詳細に実施したところで変わりません。
しかし、自分が納得して使える指標を持っておくことで、株価下落時でも落ち着いて対処、買い増し等の検討もできるようになるのではないでしょうか。
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